専攻科の選択科目

特殊関数(AP1/AE1/AP2/AE2)※

特殊関数は、工科系の学生が学ぶ数学の中では最も高度なものの一つです。 数学が好きな人や数学色の濃い研究をしたい人には選択を勧めますが、 あまり数学が好きでない人は無理に取らなくても良いでしょう。

三角関数、指数関数、対数関数など、高専生が必ず学習するような関数を初等関数といい、 それ以外の、より高級な関数を特殊関数といいます。 特殊関数の例としては、ガンマ関数、ルジャンドル関数(球関数)、ベッセル関数(円筒関数)、超幾何関数、楕円関数などがあります。

物理学や工学の問題に出てくる偏微分方程式を変数分離法で解くと、 初等関数の範囲では解けない常微分方程式がしばしば現れます。 特殊関数の多くは、歴史的には、このような微分方程式の解として定義されました。 物理学や工学に特殊関数がしばしば現れるのはこのためです。

最近はコンピュータが発達し、数値解が容易に求められるようになっているので、 特殊関数の重要性は以前ほどではなくなっています。 とはいえ、特殊関数を用いた解析解は、 系の振る舞いの分析には数値解より遥かに適していますし、 特殊関数の知識を駆使する数値計算の分野もありますので、 今後も工科系の学生にとって特殊関数の重要性はなくなることはないでしょう。

特殊関数論は「19世紀数学の華」とも呼ばれる美しい理論体系を持っており、 それ自身、純数学的な価値があります。 本来の特殊関数論は複素解析の高度な知識の上に構築されており、 数学のエキスパート以外には近づきがたいものがあります。

 

しかし、この授業では複素解析の知識は一切仮定せず、 なるべく工科系の学生向けの、実用的な話をしようと思っています。 これは講義をする側からすると非常に大きな制約ですが、 複素解析をむやみに使うと困難を感じる学生が増えそうですし、 実変数の範囲に限っても皆さんにとって十分有用な話ができるからでもあります。

特殊関数はもともと高度ですから、上のような工夫をしても、 これまで数学が得意だった人にすら十分近づきがたい数学に見える可能性があります。 したがって、それなりにきちんと学習していこうという強固な意志がないと、 途中で投げ出しかねません。 取る場合は、半年間まじめに勉強をする覚悟をしてください。 ただし、最後まで諦めないでついてくれば、合格率は非常に高いです。 また壮麗な特殊関数論を学び終えると、ある種の満足感も得られるだろう、と期待しています。

この授業では、時間的制約もあるので、 応用上最も重要と考えられるガンマ関数ルジャンドル関数ベッセル関数の3種類に限って学ぼうと思います。 これらだけに話を限っても周辺には学ぶべきことが山ほどあります。 将来、これら以外の特殊関数が必要になっても、これら3関数の知識があれば、 その経験を手がかりに各自が自学自習していけるだろうと期待しています。 特殊関数の本の多くは、既に述べたように複素解析の知識を仮定していますし、 内容的にもハイレベルなものが多いので、必要になってからの独学は容易ではないと思われます。 興味のある人はこの機会に体系的に学んでおくことをお薦めします。