担当教員の判断で「ラプラス変換」か「フーリエ解析」かのいずれかを学習します。 いずれも微分積分の応用です。 2年次の微分積分が身についていれば十分受講可能です (重積分や偏微分の知識は使ったとしてもごく初歩的なものだけです)。 高等学校からの編入生は「微分積分I」の教科書が理解できれば心配いりませんが、 担当教員に一言声をかけておくとさらに安心です。
ラプラス変換は化学では使用頻度があまり高くないので、 ラプラス変換がテーマに選ばれている場合は、 数学があまり好きでない人は無理にとらなくてもいいでしょう。 ただし、必修の応用数学Iは技術的には初等的なので、 1年間それだけだと苦労して身に付けた微積分を忘れてしまう、 という恐れが多少あります。ラプラス変換は3年次以下の数Aの復習には最適なので、 数学の実力を維持したい人には選択する価値があると思います。
一方、フーリエ解析は量子力学や量子化学では必須のテクニックですので、 フーリエ解析がテーマに選ばれている場合は、 化学系の学生も大いに学ぶ価値があります。 これを身に付けないと、量子力学や量子化学は使いこなせません。 必要不可欠のテクニックだけに、 量子力学や量子化学の本格的教科書の中にも、通常はある程度説明がありますが、 この授業のほうが丁寧かつ詳細ですので、 将来、量子力学や量子化学を自分のものとし、縦横に使いこなしたい人は、 この科目を選択しておくと良いでしょう。 もちろん、3年次以下の数Aの復習としても最適です。
この科目は3年次数学Bの続編です。 この授業で学ぶのは抽象的なベクトルの理論で 「線形空間論」と呼ばれています。 世間で「線形代数」というと、 通常はこの線形空間論までを含みます。
本校では選択科目ですが、 高校から大学に進むコースでは≪必修科目≫です。 理工医歯薬農系など広義の理科系学生が大学1〜2年次 で学ぶ「教養の数学」といえば、 微分積分とこの線形代数の2つが定番です。 微分積分の知識は2〜3年次の数学AI,AIIで十分ですが、 線形代数についてはこの授業で補わない限り、世間一般のレベルと並びません。 線形空間論は、 大学3年次編入でも難関大学だと当たり前のように出題されます。
大学、とくに難関大学を目指す人は、 この科目を選択することを強く勧めます。 大学3年次に編入したあと、学ぶチャンスはありません (専攻科進学者は大丈夫です)。 この科目がなぜ重要かというと、 理工系の専門書は、一番易しいものでも、読者が 「教養程度の微分積分と線形代数」 の知識を持つことを仮定しているからです。
工科系の数学の多くは、19世紀以前の古いものが中心ですが、 線形空間論は現代数学の影響を強く受けているので、 初めて学ぶ人は面食らうかもしれません。 しかし、めげずに学んでください。 「計算は追えるが何をやっているか分からない」というのはよくある症状です。 困ったら、お気に入りの数学教員に質問に行きましょう。 この科目は、半年学んでもあまり分かった気がしないかもしれません。 しかし学んだ経験が大切です。ちゃんと学んでおけば、 何年かするうちにちょっとずつ意味がわかってくると思います。