本校では、示された教育課程の標準をよりどころにして、 学年進行にともない着々と教育課程の完成を目指して歩を進めていましたが、 その際特に留意した事項を挙げれば次のとおりです。
まず第一に、従来の大学の教育課程に比べて、実験・実習を重視し、 基礎的な工学の理解を深めさせるともに、 その応用面についての技術も習得させることを考えました。 第二に、一般教科目は、なるべく低学年に集中して教授するようにし、 特に数学については2年生までに初等微積分学の程度まで教授し、 3年生以後の専門科目が十分理解できるように配慮しました。 したがって、工業高校などにおける専門科目の教授内容とは異なり、 3年生からは大学と同程度の内容もさして無理なく教授できるようにしました。 第三に、クラブ活動をはじめ、特別課外活動を盛んにするために、 1年生から3年生までの木曜日と土曜日の午後は授業を組まない時間割を作り、 心身の練磨をはじめ、学生同士および教員との親睦の機会を作れるよう留意しました。 第四に、各種の学校行事を計画し、心身の鍛錬をさせると共に、協同の精神を養い、 責任感を育成し、さらに、日々の授業が過重にならないよう、時々気分転換できるように配慮しました。
さて、昭和41年度で5年生までの教育課程の編成を一応終え、 先の試案にのっとって授業を実施してきましたが、 選定科目については各学科にその選定を一任しましたので、 各科の授業時数にアンバランスが生じてしまいました。 すなわち、土木工学科(現環境都市工学科)は文部省で示した基準の通り、 5ヵ年で190単位時間の授業を組みましたが、機械工学科は5単位時間、 電気工学科(現電子メディア工学科)は14単位時間の超過となりました。
本校の教育課程の中で、その特色の一例として第二外国語教育があげられます。 すなわち他高専ではドイツ語を第二外国語として採用している場合がほとんどですが、 本校では学生の希望によって、 独・仏・露の3ヶ国語のうちいずれかを選択できるようにしました。 なお、英会話は外国人講師に依頼したり、早くからLL装置による教育を実施しました
授業時間表を一瞥してすぐ気のつくことは、 非常勤講師に依頼している授業が相当数あることです。 教員の定員が少なく、選定科目の多い工業高専では致し方ないことですが、 教育課程の編成の仕方にも問題がなきにしもあらずでした。
とにかく、5ヵ年の教育課程が完成し、順調に授業が行われてはいましたが、 実際にこれを学生がどう受け止め、どう消化していくかが問題でした。 そのため、各教員は、学生の発達段階や能力に十分留意しながら、 適切に授業を進行させようとして努力しました。 しかし、それでもなおこの教育課程を実際に実施してみると不備の点が多く、 本校内部においても改善しようとして鋭意工夫を重ねましたが、 また文部省も教育課程試案の改定に41年度から着手することになりました。